10月23日の記事、「ワールドカップも終わった」にけいさんとさんぼさんからコメントをいただいきました。ありがとうございました。
オールブラックスがRWCのクオーターファイナルでフランスに負けた直後から、ニュージーランドでは、オールブラックスについて、ラグビーについて、ワールドカップについて、いろんな議論が交わされています。RWCは南アフリカの優勝で幕を閉じ、オールブラックス敗戦直後の熱く、興奮した、一部では感情的な意見交換から、今ではかなり落ち着いた意見がたくさん出てきているように感じます。もちろんまだまだ関心は高いままです。
オールブラックスについては、けいさんがコメントで書いていただいているように、その技術と能力は世界一だ、と認めている人がほとんどです。ポイントは、世界一のプレーヤーからなる世界一のオールブラックスが、なぜ今回のワールドカップで、クオーターファイナルでフランスに負けたのか。なぜオールブラックスは、ワールドカップで勝てないのか、というところです。つまり、敗因は、オールブラックスのチーム力や戦力ではなく、戦略や戦術、またはワールドカップへのアプローチの仕方にある、ということです。
ニュージーランドヘラルド紙で、Alex Wylie氏は次のように指摘しています。
「今回、南アフリカとイングランドが見せてくれたのは、経験が全てだということだ。イングランドなどは、最も若いプレーヤーが21歳。次に若いのが27歳。そして3番目に若い選手が28歳のJonny Wilkinson だ。これを見ると、我々が何をしなければならないのかがわかるだろう。」
また、さんぼさんのコメントにあるように、「結果的にローテーションポリシーが失敗だった」という意見はかなりあります。例えば、ニュージーランドヘラルド紙がずっと特集している、Cup Analysis Story の10月21日のWynne Gray 氏の記事には以下のように書いてあります。
「コンディションの調整はプレーヤーにとって有益だ。けれど、オールブラックスの選手達はプレーをすることが必要だ。問題は、シーズン前に十分なトレーニングをする時間を取ることだ。だから、オールブラックスの選手がスーパー14への参加することを止めることはできないのだ。」
私の意見ですが、さんぼさんと同じく、「結果的には」ローテーションポリシーはうまくいかなかったと思います。ただ、Graham Henry が昨年ローテーションポリシーを発表した時、スーパー14への観客数の影響を懸念する意見はたくさんありましたが、ワールドカップでそれがうまく機能しないだろうという意見は少なかったように思います。つまり、「結果」としてうまくいかなかったけれど、ローテーションポリシーの導入自体に問題があったのか、そのやり方に問題があったのかを、もう少しきめ細かく分析する必要があると思います。他のチームがやっていないことを新しく取り入れ、結果がうまくいかないと、どうしてもそこが悪かったと指摘しがちです。確かに、ローテーションポリシーには問題もあるかもしれませんが、そのシステム全体を悪者にしてしまうだけでは、また次回のカップも取れないのではないかと感じます。
先日も日本でジュニアのコーチをしている方からメールをいただきました。「多くのアタック側有利のルール改正が、ここ数年行われてきたにも関わらず、それを上回るデフェンス技術、システムの向上で、レベルが近いチームではロースコアのゲームが多いような気がします。でもやっぱりトライシーンが観客が一番興奮するシーンではないでしょうか。」とおっしゃっていました。これは、まさに、けいさんが下のコメントで書いていただいた、「オールブラックスがそんなラグビーをして勝っても国民は喜ぶだろうか?オールブラックスもあのような攻めかたをしたら勝てていたかもしれない。しかしそんな勝利は期待していない。ボールを大きく動かし、個人のランニングスキル、強さ、突破力を生かし場内が沸くようなプレーがみたいと国民は思っているに違いない。」という部分だと思います。
オールブラックスの戦術では、ワールドカップでは勝てない。でも、今回のワールドカップの決勝戦のように、トライの少ない、トライの取れない試合をファンは喜ぶのだろうか、ということです。南アフリカ対イングランドの決勝戦は、ワールドカップ決勝戦という付加価値があったから、見ているファンも盛り上がりましたが、あのゲーム内容でテストマッチだったら、果たして面白い試合だと言えるかどうか。敵陣深く攻め込んでもトライが取れない。相手もミスをしない。スコアボードがあまり動かない。そういう試合がテストマッチやワールドカップで多くなることは予想されます。オールブラックスは今後、それに「合わせて」行くのか、独自の方向を、打ち出していくのか。そして、オールブラックスのやり方で2011年、カップが取れるのか。そこがポイントだと思います。
そうすると、ルール改正の話も当然出てきます。オーストラリアラグビーユニオンの John O'Neill 氏などは、ユニオンはプライドを捨てて、ラグビーリーグを見習うべきだ、とまで言っています。「もっとトライを狙う意欲を掻き立てるようなフィロソフィーが必要だ。それが観客が求めているものだ。今回のワールドカップ、セミファイナル2試合と、ノートライのファイナルは、つまらない試合だった。これでは、観客を呼び戻すことはできない。」彼はまた、サッカー好きの南アメリカの人々の目をラグビーに向けさせるためにも、今回健闘したアルゼンチンは、トライネーションズかシックスネーションズのどちらかに参加すべきだ、とも言っています。
10月7日にオールブラックスがフランスに負けて以来ずっと続いているニュージーランドヘラルド紙のウエッブサイトのコーナーに、「Why do you think the All Blacks lost?(なぜオールブラックスは負けたと思うか?)」というのがあります。1ページに5つくらいの意見が掲載されているのですが、今日時点で1,026ページにもなっています。ニュージーランドだけではなく、オーストラリアやイタリア、イングランド、南アフリカなどからも多くの意見が投稿されています。
「オールブラックスにプレッシャーを与えすぎだ。このコーナーが1000ページ以上になっていることがその証拠だ。」という意見もありますし、「選手の選び方が間違っていた」という意見も見られます。また、「みんなお金をもらいすぎだ。勝っても負けてもたくさんのお金をもらえるのなら努力しない。」というようなものもあります。英語ですが、一般の方の意見が見られる興味深いコーナーです。
http://www.nzherald.co.nz/topic/story.cfm?c_id=116&objectid=10468414
オールブラックスはなぜ勝てなかったのか、ということではなく、「この責任は誰が取るのか」という議論も当然あります。10月8日にTV放送された、Close Up という番組で、元NZRUのCEO David Maffett 氏が、
「Graham Henry は速やかにそのポジションをしかるべき人物に渡し、できるだけ早く新しい体制をスタートさせるべきだ。」と言っています。その理由の一つが、
「今回のワールドカップキャンペーンには、600万ドル以上が使われている。それがオールブラックスのクオーターファイナルでの敗退で失敗に終わった。この経済的損失の責任は必ず誰かが取らなければならない。今までの体制そのままで、今後もやっていくわけには行かない。」
ということです。元オールブラックのNorm Huwitt 氏なども
「これはビジネスだ。とんでもない金額が動いている。確かにスポーツであり、ゲームである。でもプロフェッショナルなスポーツなのだ。」
とDavid Maffett 氏の意見を支持しています。プロとしてのスポーツ、ビジネス、そして、ビジネスを失敗させたことに対する責任、というのは、ラグビーの戦術や戦略などと同列では扱えない事柄ですが、プロのラグビープレーヤーとコーチの集団であるオールブラックスを語る時には、避けられないパートでもあります。また、お金を払って試合を見るファンやお金を出すスポンサーと、プロチームの関係を考える時、「見ている人を楽しませる試合をする」という部分が、上で書いたことと密接に関係してきます。オーストラリアラグビーユニオンの John O'Neill 氏の言っていることも、多くのファンがスタジアムに足を運ぶ、多くの人がテレビで試合を観戦する、そして多くのスポンサーがサポートする、そんな試合をプロフェッショナルな集団は見せなければならない、という考えに基づいていると思います。
今回のオールブラックスの敗戦で語られている事柄は、ひょっとしたら今後、日本のラグビーが直面することかもしれません。
日本ではラグビーシーズンが始まり、オールブラックスがクオーターファイナルで負けた話題はすでに過去のものとなっているかもしれませんが、オールブラックスについて、ラグビーについて、ワールドカップについて、そして、日本のラグビーのこれからについてなど、このブログをご覧になっているみなさんのご意見をお聞かせいただければうれしいです。
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